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スポイルズ・システム(猟官制)

 財務省の現職官僚が「バラマキ合戦」批判を月刊誌に発表したことで議論が巻き起こっています。

1)なぜ、このタイミングでメディアに公表したのか?正しいとか、間違っているとかの前にタイミングです。全ての国民がコロナで疲弊している時に、財政論振りかざしても・・・借金したらいずれ返すことは、みんな分かっているのに・・・総選挙前の政治的な意図を勘繰られても仕方ありません。

2)財政破綻とはどんな状態なのか?一言で表現できません。発言者の財政破綻の意味がまちまちです。デフォルトにならないこと(国債が償還できないこと、借金が返せないこと)イコール財政破綻?財政破綻とは、それだけではありません。想像している状況が違い過ぎます。

3)発言した官僚をクビにできるのか?新しい公務員制度発足前(戦前)は、猟官制(スポイルズ・システム)が横行していました。公職の任命を政治家が恣意的に行っていたのです。とくに、19世紀のアメリカやイギリスなどでは、選挙で政権政党が交替するたびに公務員が入れ替わっていました。スポイルズとは狩りの獲物のことです。この獲物(ポスト)を分け与えることからスポイルズ・システムと呼んだのです。もちろん、民意を反映させやすいという面がある一方、政治的腐敗や非効率な行政運営の温床になります。そこで、19世紀後半以降は、公務員の専門性や中立性を重視したメリットシステム(成績主義)が導入されたのです。日本でも、戦後、このメリットシステムが国家公務員法、地方公務員法に採用され、公務員はこれらの法律の規定によらなければ罷免されないことになっています。もちろん、こうして身分が守られているからこそ、高い倫理観が求められているのです。

 タイタニック号が氷山に向かっている?の例えが適当かどうかはわかりません。

 しかし、無料のサービスなどありません。誰かが負担しているのです。借金もいずれ誰かが返すときが来ます。現在の財政状況をつぶさに見なければならない責任は、現在の主権者たる私たちにあります。もちろん、少なくともそうした事実を私たちに伝える責任が政府にあることは、間違いありません。

 せっかくの機会ですから、明日の日本のために、大いに議論すべきです。